6/27(金) 9:32配信
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東洋経済オンライン
保守? リベラル? 自分はどちらだと思いますか?(写真:wavebreakmedia/PIXTA)
「保守支持だ」「リベラル支持だ」というときの中身は、どういうことか説明できるだろうか。「保守=安定志向、リベラル=変革志向」という説明の仕方はまちがいではないが本質ではない。もっともシンプルな本来の区分は「経済体制による分け方」だ。
つまり、「市場の自由」と「政府の介入」のどちらを重視するか、ということ。市場の自由を重視する新自由主義を認めるのが保守、新自由主義を認めず、政府の介入を主張するのがリベラル。
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この見方に立つと、これまでとは異なる政治の世界が見えてくる。
わかりやすくこの世界のしくみを解説することで、トリプルミリオンの売り上げを記録した『全人類の教養大全1』から、もっとも明快な解説をお届けする。
■あなたは保守派? それともリベラル?
この質問からはじめてみよう。あなたは保守派か、それともリベラル派か? おそらく多くの人の答えは4つに分けられる。
①保守だ。②リベラルだ。③中立だ(もしくは場合によって異なる)。④わからない。
つづいてどうしてそう思うのかと聞くと、こんな答えが返ってくる。「保守だ」と答えた人たちは、自分が変化よりは安定を求めるからだという。
反対に「リベラルだ」と答えた人たちは、自分が新しいものや変化を求めるからだという。
「中立」や「わからない」と答えた人たちの回答は本当に人それぞれだから飛ばそう。
とにかく、自身は保守やリベラルだと考えている人たちの答えには共通点がある。「保守」と「リベラル」の概念をそれぞれ「安定」と「変化」の追求という意味で使っているという点だ。完全にまちがっているとはいえないが、すごく漠然とした主観的な答えだ。
■この世界は「このままでいい」か「変わるべきか」
もう1つ質問してみよう。皆さんは僕たちが暮らすこの世界が、もちろん問題は多いけれどそれでも安定的だと思うだろうか、それとも問題ばかりで不安定だと思うだろうか?
世界という言葉じたいが漠然としてはいるが、とりあえずは抽象的な状態のまま置いておいて、答えてみてほしい。皆さんが考える世界とはどんなところだろうか?
保守とリベラルという概念は、経済体制がもとになっている。ここで質問を整理してみよう。
皆さんは新自由主義には問題があるけれど、それでも人類が見つけ出した最善の体制だと考えるか、それとも根本的な問題を抱えた、変わるべき体制だと考えるか?
政府の介入を批判して、市場の自由を重視する新自由主義が、現時点では最善策だからこれからも維持するべきだという立場は、いまの社会をそのまま維持しようという立場だ。僕たちはこのような立場を「保守」、もしくは「右派」と呼ぶ。
保守とは安定志向の人びとではなく、具体的に新自由主義を維持しようとする立場を指すのだ。どんなに新しいものや変化を追求する人でも、現在の新自由主義を擁護するとしたら、その人は保守派だといえるだろう。
たとえば、多くの人が革新的な人物だと思っているスティーブ・ジョブズは、どれだけ変化と革新を追求したといっても、政治的な立場は保守派に属するといえる。なぜかというと、彼は新自由主義を批判して抵抗するのではなく、現在のアメリカ式の資本主義社会を最大限に利用し、活用した人物だからだ。
■「政府の介入」を主張するのがリベラル
一方で、新自由主義を批判する立場を「リベラル」、もしくは「左派」と呼ぶ。これらは市場の自由を重視する新自由主義を批判して、政府の介入が必要だと主張する。ところが、いちがいに政府の介入を追求するといっても、本当にさまざまな立場がある。代表的なものとして、後期資本主義と共産主義がある
結論からいえば、政治とは「どんな経済体制を選ぶのか?」に関する議論だ。経済体制のうち、どれを僕たちが暮らす世界に適用するのかについての議論が政治の本質だといえるだろう。
選択肢は2つある。
1つは「市場の自由を主張する立場」で、僕たちはこれを「政治的保守」という。
もう1つは「政府の介入を主張する立場」で、僕たちはこれを「政治的リベラル」という。
ある人はこう言うだろう。自分は保守でもリベラルでもない中立だと。ところがその人も実は、自分でも気づかないうちに1つの志向を一貫して持っているのだ。
保守とリベラルの区分は、狭い意味での二分法的な構図ではない。それは「世界をどう見るか」ということであり、個人の価値観の表現だ。
「自分は保守でもリベラルでもない」という言葉は、「自分には価値観がない」という言葉くらいあり得ないことだ。